2019年はファクタリングという資金調達法が認知度を上げる年になりました。
元々は企業間の債権を利用したものですが、この取引ロジックを個人に応用したのが給料ファクタリングです。
今年は給料ファクタリング元年と言っていいほど、名前が一気に知れることになりましたので、ここで一旦給料ファクタリングについて振り返り、その仕組みや業界全体のマクロ的考察などをしてみたいと思います。
目次
■給料ファクタリングとはどういうものか?
ファクタリングとはそもそも、企業間の取引で発生した売掛債権を売却して、手数料分を割り引いた上で現金化する資金調達方法のことです。
売掛債権は言い換えると「将来現金を手にすることができる権利」ですが、個人にはそのような債権はありません。
しかし、「給料」に目を向けると、月末などに入金を受けることができるので、これを一種の債権と同視して、給料をもらう権利を売って早期に現金化するのが給料ファクタリングです。
感覚的には給料の前払いを受けるような感じになりますが、企業間債権のファクタリングと同様に手数料を引かれるため、金銭的には損が出ることになります。
■取引の進行手順
ここで、実際の給料ファクタリングの取引進行を見てみます。
給料ファクタリングはほとんどの場合、自分とファクタリング業者の二社間の取引で進められます。
従って勤め先は契約当事者とならず、給料債権を売却することについて説明をしたり、了承を取ったりする必要はありません。
自分と給料ファクタリング業者との間で契約が済むと、次のような手順で取引が進行します。
①契約締結による給料債権の売却が成立
②業者から、手数料を引いたうえで買取金が入金される
例:10万円分の給料債権買取金として、8万円が入金される
③勤め先から、給料がいつも通りに自分の口座に振り込まれる
例:勤め先からいつも通りに給料10万円が振り込まれる
④勤め先から振り込まれた給料を、ファクタリング業者の口座に入金して精算する
例:給料の10万円をそのままファクタリング業者に入金する
上記例では、結果として10万円の給料を早く得るために、2万円の手数料を払って8万円で売却したことになります。
■貸し付けや融資とは何が違うのか?
給料ファクタリングは、法律上は債権の譲渡契約(売買取引)にあたります。
融資や貸付などの金銭消費貸借契約とは取引の性質が根本から異なり、貸金取引を規制する法律も適用対象外になります。
貸付でないので、「返済」や「金利」の概念がありません。
その代わりに、取引の性質が異なることから色々なメリットやデメリットも含みますので、次の項から見ていきましょう。
■給料ファクタリングのメリットは?
①個人の信用情報に傷がつかない
融資や貸付の場合、必ず信用情報機関に個人情報が登録されてしまいます。
給料ファクタリングは融資とは全く次元の違う世界ですから、信用情報機関に情報が登録されることはありません。
②保証人・担保が要らない
貸付では通常保証人を求められたり、担保の提供を求められることが多いですが、給料ファクタリングは給料債権そのものに金銭的価値を求めるものですから、保証人や担保の用意は要りません。
イメージ的には貴金属や家電などをリサイクルショップに売却するような感覚です。
③金融ブラックでもOK
給料ファクタリングで重要なのは、勤め先の会社が確実に給料を払ってくれるかどうかです。
利用者個人の信用は重視されないので、仮に現状で金融ブラックの状態にあって、どこの金融機関からも融資が受けられない状態でも、給料ファクタリングは利用可能です。
④カードがなくても現金調達が可能
世の中には自らの信条としてカードを持ちたくないという人もいます。
すでに金融ブラックでカードを使えない人はもちろんですが、カードを持ちたくないという人も、給料ファクタリングを使えばいざという時の現金調達が可能です。
⑤負債を抱えなくて済む
「借金」というものに抵抗がある人はかなり多いと思います。
信用情報機関に登録されることとは別に、人生の中で負債を負い、弁済の責任を負うこと自体が耐えられないという人も、給料ファクタリングが便利です。
債権を売るだけですから、債務を負うわけではないので、心理的にも負担がありません。
⑥勤め先に知られない
多くの場合は勤め先に知られることのないように、二社間取引で進められるので、上司や同僚に気を遣うこともありません。
■給料ファクタリングのデメリットは?
給料ファクタリングは利息がかからない代わりに手数料を支払う必要があります。
現在のところ、手数料について法的な規制がないため、各業者が個別の判断で手数料を設定しています。
勤め先が契約当事者とならない二社間取引では、ファクタリング業者側のリスクが高くなることから、手数料も高めになります。
概ね、譲渡する債権価額の10%~30%程度のレンジに収まることが多いと思われます。
手数料負担は決して安くないので、気軽に何度も利用してしまうと結局は損をすることになります。
■給料ファクタリングの注意点
給料ファクタリングを利用するうえでの注意点として、闇金など悪質な業者が入り込みやすいため、付き合う業者の選定に気を使う必要があります。
法規制がなく、儲け率も高いことから、悪質な業者が紛れ込んでいることを前提に考えるようにしましょう。
評判の悪い業者については、2ちゃんねるや5ちゃんねるなどネット上の媒体に悪評が載るので、これを見ることで安全性をある程度推認することができます。
悪質業者については、業界全体の推移を見ながら、次の項でも見ていきます。
■給料ファクタリング業界のマクロ的考察
給料ファクタリングは、今年に入ってから手掛ける事業者がやっと数社出てきた歴史の浅い業界です。
初期に本格的に参入した事業者で有名なところとしては「七福神」があります。
まだ一般には認知されていない給料ファクタリング黎明期に登場した本格業者の一つで、業界では先駆者的な存在です。
また優良事業者としても認知されていて、特に事情がなければ七福神を優先して考えれば間違いありません。
その後、主に小規模の事業者が次々と給料ファクタリング事業に参入してきました。
グローリーチケットやファクタルなど、比較的安心して利用できる事業者も認められるものの、中には運営母体のはっきりしない怪しげな業者も混じるようになりました。
今年中期頃からは、公式サイトを用いて流入を考える従来の手法に加えて、ツイッターなどSNSを主戦場にする業者も多く出始めました。
この業界の業者を独断と偏見で信号機に例えると、以下のように例えることができます。
①青信号・・
公式サイトで企業情報をしっかり開示し、利用者が必要な情報を事前に発信できている業者。また利用者からの悪評がネット上で多く見られない業者。七福神などいわゆる有名どころ
②黄色信号・・
公式サイト等で一応の情報発信を行っているものの、一部に不透明な個所があったり、サイトの作りが一見して簡素で、怪しさが漂っている業者。闇金等の悪質業者がよく使う表現をサイト上で用いていることがある。
③赤信号・・
運営元が法人なのか個人なのかも分からず、素性が不明な業者。主にツイッターなどSNSで活動していることが多く、従来からある個人間融資に似た様相を呈することが多い。
当サイトでも危険信号がともる業者については随時情報を伝えているので、更新情報をよくチェックして悪質業者を利用しないようにしてくださいね。
■まとめ
本章では、2020年にどんどん新サービスが増える給料ファクタリングの全体像について、どのような現金調達法なのか、メリットやデメリットとともに見てきました。
融資や貸付とは次元の異なるものであり、信用情報に傷がつかない、カードがなくても利用できるなどメリットが多い反面、手数料負担もあるので、計画的に利用を検討しなければなりません。
また悪質な業者がすでに紛れ込んでいる前提で業者選定をする必要があるので、この点も注意するようにしてください。
来年も次々と登場するであろう給料ファクタリング業者について、随時情報を発信していきますので、ぜひチェックをお願いします。